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Studio 308

翻訳 Kuni  (See Original English)


イングヴェイは夢のスタジオを築く

いかにしてスタジオ308が始まったのか

1993年末、イングヴェイはハンマーの槌音と鋸の引き裂くような音を我慢しなければならなかった。その後、電気工、大工、配管工、引越し業者、インテリアデザイナーらが次々とやってきた。しかし、イングヴェイがちょうど次のワールドツアーに出発しようとするときに、遂に彼の夢のスタジオは現実のものとなった。

以下はファンクラブがイングヴェイの新しい施設をツアーした後に行ったインタビューである。

[写真:@マルムスティーンファンクラブ]

イングヴェイが機材を説明するにつれて、彼の目が輝き始める。「俺は何事にも妥協しない。俺はレコーディング機材のロールスロイス、Studer社製24トラック2インチテープレコーダーを導入した。これはスタジオの心臓部だ。この装置を持っているということは俺の新しいスタジオでレコーディングしたものは何でも、たとえいかに設備が精巧などこか他の場所でも耐えられるということになる。卓(ミキシングコンソール)は32インプット+48インプットのMackie社製32.8で、自動でパンチインその他の作業ができる。更にデジタル8トラックの機材2基があり、つまり24のアナログトラックと16のデジタルトラックがある。これによりミックス、マッチ、フライインができるということになる。例えば、一度コーラスを歌ってそれからフライインできる。アウトボード機材はフェーダー、イコライザー、マイクプリアンプが一つになったNeve社製モジュールだ。それらをラックに入れるとNeveモジュールが3チャンネルになる。ヴォーカルやギターマイクをそれに通した音は信じられないくらいウォームなんだ。」

この最新式の夢のスタジオを設計したのはジョン アーサーで、彼の父はマイアミの由緒あるクライテリアスタジオを設計・建設した。アーサーは下に砂を詰めた浮遊床からシルバーグレイとワインレッドの落ち着いた内装にいたるまで、細部に渡りすべてを最高に仕上げた。アーサーはどの角度からでも音が正確でピュアに出るようにレコーディングルームを「調律」した。

イングヴェイにとって、自分のスタジオを完成させることは巨大な投資であったが、今後のアルバム製作で節約できるので元が取れる。「俺のキャリアでスタジオは必要不可欠なものになったんだ」とイングヴェイは語る。「もはや他人の機材やスケジュール、出費に左右されることはない。エディーヴァンヘイレンは自分のスタジオを持っているし、スティーブヴァイや他のやつらも持っている。通りへ出て「やった、俺は自分のスタジオを建てたんだ!俺は15年もの間これをやりたくて、今実際にやりとげたんだ。」って叫びたい気分だ。」


マイアミ ナイス: イングヴェイマルムスティーンの最新式ホームスタジオの内側
ジョー ラライナ, GUITAR WORLD誌, 1996年 1月号

イングヴェイマルムスティーンの不規則に広がったマイアミの自宅の2階の裏の片隅の人目に付かないところに、スウェーデンのギタリストの夢が現実になったスタジオがある。このスタジオは彼が大事にしている黒いフェラーリに敬意を表してスタジオ308と名付けられた。

「これは単なる「ホーム」スタジオではなく、本物のスタジオが自宅にできたんだ。」空調が行き届いた快適なコントロールルームでリラックスしながらイングヴェイは語る。「ここは完全に機能的ですべて最高の機材がそろった4室のプロスタジオなんだ。このスタジオに欠けているものは何もない。」

イングヴェイはアンプをコントロールルームに置いているが、スピーカーは階下のガレージの隣の防音室に置いている。「ガレージの壁のインプットパネルは16基のマイクに適応できる。俺は簡単にドラムキットをセットアップして、コンクリートの床と木の屋根のガレージでドラムをレコーディングできる。すごく生き生きとした音がするんだ。」とイングヴェイは語る。

彼はニューアルバムマグナムオーパス(Viceroy Music)をスタジオ308でレコーディングしようと計画していたが、建設が予想していたよりかなり長く6ヶ月も遅れたので、一流の作品の中でもデレク&ドミノスのレイラが生まれた有名なクライテリアスタジオでアルバムを仕上げた。イングヴェイはアルバムのレコーディングに使用するためにクライテリアへ新しく購入したスタジオ機材を車で運び込み、これらを試すのにとても熱心だった。

「イングヴェイのスタジオの心臓部はStuder A-827 24トラックアナログマルチトラックレコーダーだ。」とイングヴェイのギターテクニシャンであるピーター ルースは語る。「彼はまたTascam DA-88 デジタルレコーダー2台も持っている。マイク入力はすべてチューブプリアンプとチューブコンプレッサーを通している。アナログテープと真空管アウトボード機材の組み合わせはレコーディングで実にファットでウォームなサウンドが出る。DA-88は主にイングヴェイがセッションワークをするときや、オーバーダブするために彼に作品を渡すときに使用する。それから彼はそれをDA-88からStuderへ移したり、パートを加えて2つを一緒に組み合わせたりする。」

それぞれ96ポイントを持つ5基のパッチベイ(計480ポイント)によりイングヴェイはどんな機材やマイクのインプットでもルートを好きなように選択することが容易になる。アウトボード機材はFocusrite社ISA 215デュアルチャンネル モノマイクプリアンプイコライザー2基、Tube-tech社(Pultec方式) PE-1Cイコライザーコンプレッサー2基、Summit Audio社TLA 100チューブレベリングアンプリファイヤー2基、Urei社1176-LNリミッター2基、Drawmer社DS404 クアッドゲート1機、Yamaha社GC2020Bコンプレッサー/リミッター1基である。エフェクターはLexicon社LXP-1 3基、LXP-5 1基、DigiTech社GSP2101 プリアンプ/プロセッサー1基がある。再生装置はBryston社4Bアンプで増幅しWestlake Audio社BBSM-8Fモニターを使用する。Studerマルチトラックレコーダーと共にアウトボード機材を使用して、イングヴェイは世界で最高の商業レコーディング施設のパフォーマンスに匹敵することができる。

イングヴェイのスタジオにStuderの導入が不可避だったのは、彼がアナログなギターサウンドを好むからである。--マグナムオーパスのほんの少しの部分だけはTascam DA-88でレコーディングされたが、ほとんどすべてはアナログでレコーディングされた。--「Studerはアナログ機材の王者だ。」とイングヴェイは語る。「世界的なスタジオはどこでもStuderを持っている。SonyやOtariは素晴らしいアナログ機材を作っている。Seikoはいい時計を作っているが、俺はRolexをしている。そしてデジタル機材ではStuderのサウンドを再現できることはない。もしジャズあるいはラップですらをレコーディングするならデジタルは手軽で簡単だ。しかしギター主体のロックミュージックはStuderを使った方がずっと良いサウンドになる。疑いの余地はない。」

Studerを2階のスタジオに運び込むだけで非常に困難な作業だった。「俺は朝の7時に起きて引越業者の指揮を手伝わなければならなかった。」とイングヴェイは説明する。「階段を苦労して運びあげるのに2人は下から1人は上から引き上げるため3人のでかくてたくましい男達を要した。Studerの重さは約600ポンドある。階段を1階分上げるだけに600ドルもかかった!男達はそれをかろうじてやった。彼らは汗をかく弾丸だ!」

「たくさんの作業をこのスタジオに費やした。」彼は続ける。「部屋の支度をして、ちゃんとしたレコーディング施設として利用するために、家中をほじくり返さなければならなかった。クローゼットや壁を取り壊さなければならなかったし、円鋸と大ハンマーは俺を8時にベッドから叩き起こした。すべてのエアコンのラインを引き直して新品を導入し、家全体の配線を引き直さなければならなかった。スタジオは家とは別に電力を引いている。もし俺が新しいバスルームを設置していたのなら、絶えず続く騒音が本当に俺を怒らせただろう。だがこのスタジオは俺の人生の夢なので、俺はすべての騒動にじっと我慢した。」

イングヴェイは今後の作品すべてをスタジオ308でレコーディングするつもりである。「俺は世界中のスタジオでレコーディングしてきた。」彼は説明する。「デモのギターソロは多くの場合アルバムよりいい音をしている。なぜならプレッシャーがないからだ。スタジオでは表現したいことのまわりに暗雲が垂れ込めている。作品を作るということは石に刻みつけると言うことだ。音楽業界から長い間いなくなったり死んでしまっても、プレイしたものはずっと残るだろう。だから作品は偉大であるべきだ。自分でも驚くような作品を作らねばならなく、それをやるのは容易ではないので、完璧な雰囲気でやるべきだ。これが俺が自分のスタジオが欲しかった理由だ。」

「俺は時間を気にしたり、誰かに「朝の3時だ、これでおしまいにしてくれ」と言われることに悩まされなくなった。以前は、たいていとてもクリエイティブでプロダクティブな最中に、そういうことが起こっていた。今では俺はいつでも作業できるし、誰も俺に立ち去れと言うことができない。--これは素晴らしい気分だ。俺は階段を下りてテニスをして、その後でスタジオで作業してもいい。レコーディングしたくなければ、日光浴したりプールで泳げばいい。アルバムを製作する戦いの半分は、そのときどのように感じるかだ。インスパイアされなければならないし、新鮮さ、エネルギー、自発性を持たなければならない。ステージに立つときはそれらすべてが自然にやってくる。これはレコーディングの時はとても難しい。インスパイアされなければ、演奏や作曲がうまくできない。」

おそらくイングヴェイの新しいスタジオ機材を持ち込んだということがクライテリアスタジオでの彼のプレッシャーを取り去った。: マグナムオーパスは彼が今までレコーディングしたものと同じく印象的なウォームできれいなサウンドをフィーチャーしている。「マグナムオーパスは俺が常に到達しようと試みていたすべてのものの縮図なんだ。」とイングヴェイは語る。「俺は今でも自分のスタイルの改良を続けている。アルバムはたった6週間でレコーディングしたが、すべてのソロはほとんどファーストテイクだ。俺は共同プロデューサーにクリス・タンガリーデスをクレジットしなければならない。彼は俺のギターが鳴るべきサウンドにしてくれた。マーシャルスタックの10フィート前にいるようなサウンドだ。」

イングヴェイは、スキャロップドネックのフェンダーストラトキャスターを'70年代初期のマーシャルMk II 50Wヘッドとセレッションスピーカー付きのマーシャル4x12 キャビネットに通すという、従来いつも使用しているのと同じ機材でマグナムオーパスをレコーディングした。タンガリーデスが選択したマイクはNeumann社のU87だった。以前のアルバムではイングヴェイが今もステージで使用しているShure社のSM57を信頼していた。

イングヴェイは音のforceとテープの間に何も置かない。「俺はエフェクトは使わないでレコーディングする。」と彼は語る。「ミキシングの時にコンサートホール風のリバーブをかけるだけで他は何もしない。もし直接テープにレコーディングするときにリバーブをかけたら行き詰まってしまう。」.

「たいていのギタリストは実に高出力のピックアップに頼っているので、実際の楽器からの出力はとてもパワフルだ。俺にとってこういうやり方は間違っている。というのもギターの信号は全く歪みがなく完全にピュアでなければならないからだ。俺がディマジオのHS-3ピックアップを使用しているのはそういう理由だ。このピックアップはたいていのピックアップより出力が低いが、リア、フロントのどちらにしても非常にはっきりしたサウンドを生み出す。俺は信号を歪ませないでブーストするプリアンプを使って信号をブーストさせる。いったん信号がマーシャルにたどり着けば、アンプの真空管が歪みを作り出す。スピーカーによる歪みは全くない。4x12キャビネットと100Wのアンプをフルにすると、スピーカーのコーンによる実に酷いたるんだ歪みが発生する。俺が50Wヘッドを好むのはこのためだ。このヘッドは強く突き出さないでとてもなめらかに歪み、4x12キャビネットによって再現される。」

「俺は高い弦高によりピックアップの出力が低くなってしまうのを補わなければならない。多くのギタリストは低い弦高で高出力のピックアップを使用しているが、これは弦の振動は少ないが高出力のピックアップでブーストするということを意味する。彼らのサウンドは初めから既に歪ませられている!他人のスタイルをけなすのではないが、この方法は俺のやり方でプレイするのは大変難しい。」

このコメントでイングヴェイは他人を批判しているはずがなく、最近Guitar World誌のページを飾っているギタリストをどう思うか彼に質問することとは違う話だ。「おそらく「ギタリスト」に迎合している雑誌はかろうじてプレイできるやつらを表紙に載せるべきだとは思わない。彼らがたとえいかに多くのアルバムを売っていても!」彼は叫ぶ。「俺は音楽界で起こることに自分自身をさらすことは辞退する。俺はいつも自分の好きなことをやってきたが、少しもファンを失っていない。彼らは誰もグリーンデイを聴かない!」

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