Attack!!

Yngwie J. Malmsteen's Rising Force
アタック!!/
イングヴェイ・J・マルムスティーンズ・ライジング・フォース

株式会社ポニーキャニオン
2002.09.04
PCCY-01582

comment

    賛否両論のアルバムである、しかし多くのファンがこれを素晴らしいと諸手をあげて歓迎してくれた事も事実である。本作のサウンドは前作War〜と同質の激しさを保ちながらも初期のころの希薄さ透明感をも合わせ持つ不思議なサウンドである。音圧と厚みは前作に比べると随分異なり、音の塊がうねる感情のようで猛々しかった前作とは違って各パート各楽器が手に取れるようにクリアで希薄な音場である。これはYngwieの持つもう一つの側面であり、より幅広いリスナーの心を掴めるわかりやすいサウンドである。随所にちりばめられた宝石のようなきらめくメロディ、そして一層磨きがかかったギターワーク、やや難解で粗削りな曲展開とボーカルライン、全体のアンサンブルはライブのように継ぎはぎや加工がないプレイヤーの息づかいが伝わる臨場感を保っている。実際ほとんどのパートを数テイクでとって採用しているという言葉がまるまる信じられる音の作りである。Yngwieがアルバムにもとめているもの、それが何で有るかが理解出来なければ、有る意味掟破りとさえ受け取られる危険をはらんでもいる。そしてアルバム全体の印象はどこかで聴いた懐かしさに新しいエッセンスが聴くものの快感を誘う、すでにYngwieサウンドを知るものには彼の再現芸術に酔えることであろうし、始めてそのドアを開ける人にも本作の衝撃は心地よいに違いない。
    アルバムのジャケットは赤いが、私のこのアルバムの印象は青い炎である。そしてこのアルバムに秘めたYngwieの感情は歌詞に現れている、決して具体的ではないが彼は怒りに満ちている。しかしそれはWar〜で見せた彼の内面に向けた猛り狂う怒りではない。今世界で起きている事とそれに対する自分の無力感だろうか、誰もが抱いた思いかもしれない、あの日のあのシーンを見た者が抱いた感情そのものが、深い悲しみと冷たい怒りと静かな決意となって本アルバムに秘められているような気がする。
    Yngwieがアルバムを通して語りかけてくるものをもっと素直に感じたいと思う。一方で彼がAlchemyから始めてWar〜で深化させた革命的な試みは、このアルバムではすこし背後に隠されているような気がする。彼にとってATTACK!!はAlchemyで示した上昇気流でもWar〜で示した濁流でもなくむしろ怒りを伴う悲しみと祈り。それはいくつかのインスツルメンタルの中に込められた感情を感じとるしかない。
    このアルバムが世界中の多くのフアンに肯定的に受け入れられることは有る意味Yngwieにとっては幸運であるに違いない。Malmsteenの作品群はガウディの寺院のようなものである。その一つを取って見てはすべてをしる事は出来ない、ジグソーパズルのようにすべてをしかるべき位置にはめ込んで、一歩下がってすべてを眺めたとき、それが全体のどの部分でどういう意図で制作されどういう彼の生涯を賭けて構築している一大作品のなかのどの部分でどんな位置づけになるのかが判別つくようになる。おそらくアルバムリリース直後にはその全体像を把握することは難しい。  9/14/2002 yoko

01. Razor Eator レイザー・イーター
02. Rise Up ライズ・アップ
03. Valley Of Kings ヴァリー・オブ・キングス
04. Ship Of Fools シップ・オブ・フールズ
05. Attack!! アタック!!
06. Baroque & Roll* バロック&ロール*
07. Stronghold ストロングホールド
08. Mad Dog マッド・ドッグ
09. In The Name Of God イン・ザ・ネイム・オブ・ゴッド
10. Freedom Isn't Free フリーダム・イズント・フリー
11. Majestic Blue* マジェスティック・ブルー*
12. Valhalla ヴァルハラ
13. Touch The Sky タッチ・ザ・スカイ
14. Iron Clad アイアン・クラッド
15. Air* エアー*
16. Nobody's Fool ノーバディーズ・フール (日本盤ボーナス・トラック)

*インストゥルメンタル

Produced by Yngwie J. Malmsteen
プロデュース/イングヴェイ・J・マルムスティーン

All music composed and arranged by Yngwie J.Malmsteen
作曲、編曲/イングヴェイ・J・マルムスティーン

All lyrics and merodies written by Yngwie J.Malmsteen
作詞、メロディー作曲/イングヴェイ・J・マルムスティーン

Track15, a variation on a theme by J.S.Bach
15曲目/バッハの主題による変奏曲

Yngwie J.Malmsteen/All Lead Guitars, Rhythm Guitars, Acoustic Guitars, Bass, Fretless Bass, Synthesizer Guitars, Sitar, Cello, Keyboards, Backing Vocals and Lead Vocals on“Freedom Isn't Free”
イングヴェイ・J・マルムスティーン/ギター、ベース、フレットレス・ベース、シンセサイザー・ギター、シタール、チェロ、キーボード、コーラス、“フリーダム・イズント・フリー”のリード・ヴォーカル
Dougie White/Vocals   ドゥギー・ホワイト/ヴォーカル
Derek Sherinian/Keyboards   デレク・シェリニアン/キーボード
Patrick Johansson/Drums   パトリック・ヨハンソン/ドラムス

Engineered and Captured by Tom Fletcher
   エンジニアリング、記録/トム・フレッチャー
Mixed at Sutdio 308 by Tom Fletcher
   ミキシング/スタジオ308にて トム・フレッチャー
This album was Recorded and Mixed
from April to June 2002 at Studio 308, Miami, FL.
   /このアルバムは2002年4月より6月にかけてフロリダ州マイアミのスタジオ308にて収録、ミックスが為された。 
Drums Recorded at Baroque & Roll Studios, Miami, FL
   ドラム録音/フロリダ州マイアミ バロック&ロール・スタジオにて
Mastered by Brad Vance at DNA Mastering, Los Angeles, CA
   マスタリング/カリフォルニア州ロスアンジェルス
          DNAマスタリングにて ブラッド・ヴァンス
Photography/Larry Marano   写真撮影/ラリー・マラノ
Artwork/Sandra Hiltmann @ SPV   
   ジャケット製作/SPV社 サンドラ・ヒルトマン

初版購入特典:Yngwieトレーディングカード

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